エネルギー管理士インタビュー <第4回> 姫井浩明さん(神奈川県)
エネルギー管理士インタビューの第4回は、博士号(工学)を持つエネルギー管理士、姫井浩明さんを取材しました。
姫井浩明さん
1968年 神奈川県川崎市生まれ、横浜市育ち
東北大学を卒業、東北大学大学院(修士課程)を修了後、三菱ガス化学株式会社に入社。
入社1年後から3年間、仕事をしながら東北大学大学院(博士課程)に通い、博士号(工学)を取得。
三菱ガス化学に10年間勤務の後、ベンチャー企業2社を経て、2009年に姫井エネルギー環境管理事務所として独立開業。
今年、その個人事務所を合同会社フロー・エナジー・イノベーション(神奈川県横浜市)として法人化し、同社の代表社員を務める。
全国エネルギー管理士連盟 東日本支部長
― 三菱ガス化学では、どのようなお仕事を?
(姫井さん) 入社当時は、化学工場のトラブルシューティングをしていました。不純物の混入や異臭などへの対応です。
― 博士号はどのように?
(姫井さん) 三菱ガス化学に入社した後に、東北大学でお世話になった先生からの誘いがあり、社会人向けの新制度を活用して博士課程に進むことになりました。
― 働きながら、博士課程に?
(姫井さん) そうなんです。当時、平日は新潟で勤務して、週末は大学のある仙台で過ごしました。土日は仙台の同級生の家で寝泊まりして。集中講義のときだけは、有給休暇を取って平日も大学に通っていました。
― それを3年間も?
(姫井さん) はい。新潟から仙台へは車で2時間半くらいなので、結構近かったですよ。
それに、量子化学の研究はシミュレーションがメインなので、仕込みだけすればあとはパソコンが頑張って計算してくれましたし。笑
― エネルギー管理士の資格を取ったのはどのような経緯でしょうか?
(姫井さん) 博士号を取る年(入社4年目の年)に、トラブルシューティングの部隊から製造部に異動になりました。私が配属された部門の化学品は付加価値が低いので、プラントの省エネ対応が私の主な仕事でした。それで、エネルギー管理士(熱)の資格を取りました。
当時、工場の他の人達も、危険物取扱者、高圧ガス製造保安責任者、エネルギー管理士という順番で資格を取っていました。
― そして、転機が?
(姫井さん) 三菱ガス化学で10年間勤めて、会社を辞めました。東北大学で助教授になる予定で、仙台にマンションも購入して家族で新潟から引っ越しました。
― それで、大学の助教授に?
(姫井さん) いいえ。春に仙台に引っ越して、助教授への就任が決まる秋の教授会を待たずに、ある会社に引き抜かれまして。それで、東北大学で客員教授をしていた人の会社に行くことにしたんです。大阪の会社ですけれど。笑
― そこで、どんなお仕事を?
(姫井さん) 水素製造プラントのコンサルをやりました。天然ガスを取り扱うことは三菱ガス化学で経験していましたし、触媒の知識も豊富にありましたので。また、燃料電池技術の開発にも携わりました。そこで3年間、頑張りました。
― それから?
(姫井さん) 燃料電池には課題も多く、普及するにはまだまだ時間を要するだろうと考え、省エネで生きて行こうと決心しました。それで、スーパーマーケット等の省エネコンサルを行っている会社に行きました。東京の市ヶ谷の。
― その後、独立を?
(姫井さん) はい。以前の知り合いなどから仕事をいただきながら、省エネ診断などで。
― 食品工場のお仕事が多いようですが?
(姫井さん) たまたまですね。知り合いにスーパー出身の方がいて、その繋がりで仕事をもらいました。しかし、今になって思うと、食品工場は省エネに関して遅れていたのかもしれません。食品安全のほうに目が行って。
― 北海道でもお仕事を?
(姫井さん) それも、スーパー出身の方に工場を見て欲しいと頼まれたのが始まりです。その後、Sapporo Energy Gatewayに参加して、省エネに関する組織づくりに取り組んでいます。今では、1ヶ月に2回(3日×2回で計6日)の頻度で北海道に行っています。
― エネルギー管理士のやりがいは、どんなところでしょうか?
(姫井さん) お客さんとシンクロというか共鳴できるところですね。お客さんから「そういうことがやりたかったんだよ」「言葉にしてくれてありがとう」などと言われると本当にうれしいです。
― 例えば?
(姫井さん) ある工場で空気コンプレッサに問題を抱えていました。私がコンプレッサの使い方について話すと、お客さんから生産の仕方についてどんどんアイデアが湧き出てくるんですよ。私が最初の1歩を踏み出すことによって、そういうコラボレーションが生まれるわけです。
― 姫井さんの仕事に対する哲学はなんでしょう?
(姫井さん) 自分にとって嫌な仕事はしないことです。
私も独立当初は補助金申請などの定型業務をしていましたが、自分には合わないので良い仕事にならない。個人で仕事をしていると信用ほど大事なものはないわけですが、結果としてそれを失ってしまいます。
やはり、自分で出来て、やりたい仕事をすることが好循環に繋がります。元々、自由を求めて独立したわけですから。本当にやりたい仕事に巡り合うまで我慢することが大切だと思っています。
― これから先、姫井さんがやりたいことは何ですか?
(姫井さん) 2つあります。
1つは、省エネソリューションをビジネスとして成功させることです。これまで、大手企業だとソリューション以外のところで利益を得ていたり、個人業は間接費用がかからないから何とか成り立っていたり。省エネソリューションをビジネスとして成立させるためにはいろいろと課題があるわけですが、それを乗り越えてビジネスとして成立させたいと考えています。今、まさにうまく行きつつあるところです。
もう1つは、合理的な社会をつくるための組織づくりとその運営をやっていきたいです。不思議なことに、私がそう思った矢先に、全国エネルギー管理士連盟・東日本支部長の話が舞い込んできました。
― 最後に、姫井さんが世の中に伝えたいことがあればお願いします。
(姫井さん) 世の中には、エネルギー管理士では食っていけないという人がいます。しかし、私はこうして実際にエネルギー管理士で生計を立てています。
将来、どうなるかわからないし、確立された方法論があるわけではないけれど、このIT的な社会の中にありながら、エネルギー管理士は人と接する機会が多くて人の温かみを感じられる仕事です。
エネルギー管理士を目指す人達には、是非、エネルギー管理士になってもらいたいです。そして、良いエネルギー管理士像を作ってもらいたいですね。
今回のインタビューでは、全国エネルギー管理士連盟・東日本支部を訪問しました。場所は、東京駅・八重洲南口から徒歩10分、有楽町駅・京橋口から徒歩4分です。詳しくは、以下の全国エネルギー管理士連盟のホームページをご覧ください。
<2018年9月11日掲載>