エネルギー管理士インタビュー <第5回> 本田日出男さん(広島県)
エネルギー管理士インタビューの第5回は、岡山県の工場でエネルギー管理士を務める本田日出男さんを取材しました。
今回、エネルギー管理士インタビューで初めての工場訪問となりました。
本田日出男さん
1964年 山口県下関市生まれ
2才のときに広島県福山市に引っ越し
高校時代まで福山市で暮らす
愛媛大学 農学部を卒業後、福山市に戻り、
現在も同市に在住
エフピコアルライト株式会社(岡山県・笠岡市)
生産支援部マネジメントシステム課 課長
ISO9001・14001事務局
エネルギー管理企画推進者
2014年 中国経済産業局「エネルギー管理優良事業者等」受賞に貢献
(省エネルギーに大きな成果をあげ、他の模範となる事業者等を中国経済産業局長が表彰)
― 大学は農学部だそうですね?
(本田さん) はい。木材関係です。森林材、木材理学、木材強度、測量などを勉強しました。同級生の22~23人中、15~16人は県庁などに就職して公務員になりました。
― どうして、農学部に?
(本田さん) 最初は工学部志望でしたが、本当は行きたくなかったんです。工学部には。
農学部志望の友達に「どうして農家でもないのに農学部に行くのか?」と聞いたら、「どうして家が工場でもないのに工学部に行くのか?」と言い返されて。確かにそうだなと。それで、自分も農学部に行ってみようと。
― 大学を卒業されて就職はどちらに?
(本田さん) ユニオンハウス株式会社(ミサワホーム岡山工場)に就職しました。大学の同級生の中で民間企業への就職は珍しいのですが、大学で学んだ木材関係、強度設計などを活かせる木工業でした。
その後、広島県府中市の同じグループ内の企業に移り、公営住宅向けの内装パネルの設計などをやりました。そこで、機械関係、NC装置、CAD図面などを学びました。約16年の勤務です。
それから、住宅資材販売会社などを経て、東広島市の「ドア」の会社で3年くらい。そこでは実績が認められて80人くらいの工場の工場長になりました。しかし、その業界は過当競争で、私の在籍した会社も業績は厳しい状況でした。
― それで?
(本田さん) 偶然、その「ドア」の会社に出入りしていたダンボール会社の担当営業が私の中学・高校時代の同級生で、そのダンボール会社というのが「アルライト」でした。当時、関東に新しい工場が出来るので、うちに来ないかと言われて。
それで、2006年10月にアルライトに入社して、もうすぐ12年になります。
― アルライトではどんなお仕事を?
(本田さん) 入社時、社長に「生産計画を組んで欲しい」と言われました。
それなら出来るなと。
しかし、実際には品質管理課に配属となり、ISO9001の事務局をやりながらISO14001にも取り組むことになりました。
そして、社長の要望でQC検定1級の勉強をしました。
嫌々でしたが転職して間もないこともあり、やるしかない状況でした。おかげで、QC検定1級に見事に合格しました。
― エネルギー管理士には?
(本田さん) その後、2011年にエネルギー管理士(熱)に合格しました。
― どうして、エネルギー管理士を受験しようと?
(本田さん) 当社の工場は 第2種エネルギー管理指定工場なので、本来なら「エネルギー管理員」で良いのですが、いろいろなセミナーや講習会に出席するとエネルギー管理士でないことに劣等感を抱くことがありました。
それで、当時、QC検定に合格して調子に乗っていたこともあって(笑)、エネルギー管理士にもチャレンジすることにしました。その後、電験3種にも合格しました。QC検定のおかげで、朝3時半に起床して勉強する習慣が身に付き、今もそれを続けています。
ちなみに、不動先生(エネルギー管理士インタビューにもご登場)のDVD講座でエネルギー管理士と電検3種の勉強をされたそうです。 |
― その当時の工場のことを教えてください。
(本田さん) 私がエネルギー管理士になる以前、当社内では細かな法律が守れていない状況でした。
ISOの活動の中で省エネ法の存在を知って、エネルギー使用量を計算してみると規定量を超えていたため、中国経産局に相談に行ったりもしました。振り返ってみると、当時は本当に酷い状況でした。省エネ法の説明会で説明を聞いて、本当に頭が痛かったのを覚えています。
それで、エネルギー使用量を1%ずつ削減していくために、社内に「エネルギー管理委員会」を設置しました。
― そこから、中国経済産業局の局長賞を?
(本田さん) はい。いろんなことに取り組みました。
省エネ診断を受けて、ダンボール製造に必要なコルゲートマシンの蒸気配管の断熱ができていないことに気付いて対応しました。
それから、「見える化」の一環としてEMS(エネルギーマネジメントシステム)も導入しました。今では珍しくありませんが、リアルタイムで計測して、パソコンまで見に行かなくても、工場内の「その場」で数値が確認できるディスプレイを設置しました。それに、ボイラーの燃料転換、インバーターやLEDの導入なども行いました。
その後も、いろいろとパフォーマンスを向上させて、5年くらい実績を積んだ結果、2014年に中国経産局の局長賞を受賞しました。そして、今では、法律を守る意識が根付きました。
― それでは、もう、エネルギー管理士としてやることがないのでは?
(本田さん) いえいえ。半年前に本社工場が竣工しまして、前の工場から本社機能と化成品(プラスチックフィルム)の製造を移したのですが、エネルギー管理の視点からは課題が多い状況です。
― 新しい工場なのに?
(本田さん) 工場の設計では、エネルギー管理だけではなく いろんな立場の人の意見が反映されます。特に製造工程の生産性などに重点が置かれてしまいます。
導入したばかりの真新しい機械を入れ替えるわけにはいかないので、しばらくは機械のチューニングがメインになりますが、エネルギー管理士としてやるべきことはいろいろとありそうです。
また、工場屋上への太陽光パネルの設置も検討しています。
― ところで、「全国エネルギー管理士連盟」に参加されていますが?
(本田さん) 省エネルギーセンターの「月刊・省エネルギー」で知ったのだと思います。定年後を見据えて、社外の人達と徐々に繋がりを作っておきたいという気持ちがありました。
― 実際に参加して、どうでしたか?
(本田さん) まだ組織の規模が小さいからなのか、皆さんと親密なお付き合いが出来て良いですね。
この本社工場にも、全国エネルギー管理士連盟の関係者に何度か訪問いただいて、アドバイスをいただきました。それに、岡山県庁の方とも繋がりが出来て工場を診断していただきました。やはり、会社の中だけでは行き詰まり感があるし、まだ結果を出せるかどうかはわからないですけれど、間違いなくアクションは起こせているので、とても満足しています。
― 本田さんにとって、エネルギー管理士のやりがいはどんなところでしょうか?
(本田さん) やっぱり、結果が出るとうれしいですね。
削減分は、よく「真水」と言われるように、そのまま会社の利益になるわけですし。
結果が出るまでは「本当に大丈夫かな」と心配になることもあるだけに、結果が出ると本当にうれしいです。
― 逆に、エネルギー管理士の辛いところは?
(本田さん) 法律やエネルギー削減について指摘をすると、会社の一般社員からは嫌われているのではないかと思い、心が折れそうになることも多いです。でも、世の中のためにやっているという自負心で頑張っています。
― 最後に、何か世の中に伝えたいことはありますか?
(本田さん) 私は農学部を卒業しました。しかし、私のような畑違いの者でも、頑張って勉強してエネルギー管理士をやっています。大学時代は化学が好きで物理は嫌いでしたが、物理も好きになりました。こうやって、私のような変わった経歴でも工場のエネルギー管理士として頑張っていますので、いろんな人達にエネルギー管理士を目指して欲しいです。
<会社紹介> エフピコアルライト株式会社
〒714-0062 岡山県笠岡市茂平2918番地46
食品トレー容器の「エフピコ」の子会社。プラスチックフィルム製造の本社工場と、ダンボール製造工場を保有。
プラスチックフィルムは主に親会社のエフピコ向けに、ダンボールは一般向けにも販売。
ダンボールは、小回り・多品種・小ロット対応がウリで、ネットでの見積り依頼・発注も可能。
近日中に、ダンボールの森林認証にも対応する予定。
【 営業担当者からの一言 】
私共は、中国地方を中心に段ボールを製造販売しております。
各エリアに営業マンを配置し、お客様への素早い対応が特徴です。
小ロット製造、短納期対応、形状や寸法提案により、コスト削減や在庫スペース確保のお役に立ちたいと存じます。
<2018年9月20日掲載>